紅茶の話Story of Tea

茶園で紅茶が出来た後

こちらでは、紅茶の葉っぱが出来た後、どのようにして私たちの手元にやって来るのかお話しましょう。

茶園で出来上がった紅茶葉は、オークション(競り)にかけられるのですが、その前に、紅茶の葉の良し悪し(品質)を、紅茶専門の鑑定人「ティーテイスター」が鑑定(紅茶の葉のランク付け)をします。
鑑定人には、複雑な特性を持つ紅茶の味、色、香りを審査する感覚的な技術と、紅茶製造や取引相場などの知識が必要で、的確な判断が難しい仕事です。

紅茶の世界が確立されてから今日まで、色んな科学的な分析が行われてきましたが、依然として紅茶の鑑定は、テイスターの五感による審査が主なんです。
紅茶は、飲んで美味しければ良い!ということですね。

紅茶の品質基準は、

  • 紅茶葉の見た目
  • 紅茶を実際に淹れてみた水色(すいしょく)
  • 紅茶の香り
  • 紅茶の味
  • 茶殻の状態(香りなど)

そして、紅茶のテイスティングは1度だけではありません。紅茶は色んな段階でテイスティングされているんです。
まずは、紅茶を作っている紅茶工場。
次は、紅茶の取引時。(茶園で出来た紅茶の価格を決める時)
さらに、紅茶メーカーでブレンドする場合は、ブレンダー(紅茶を配合する人)が品質を計るためのテイスティング。
最後に、一般の方が味わった時です。

紅茶工場でのテイスティングの様子です。

テイスティング室は一般的に北向きで、直射日光を避けた窓際の明るい部屋が使われています。
蛍光灯の光は、紅茶の水色を見誤らせるので、自然光が利用されています。
紅茶のテイスティングは、「カップテスト」と言って、紅茶葉をフタ付きのカップに入れてお湯を注ぎ、蒸らします。
蒸らし終わったら、カップのフタを押さえながら、抽出できた紅茶を別のカップへ移します。
最後の一滴まで紅茶が落ちるよう、斜めに向けてカップの上に乗せておくんです。
茶殻はフタの裏に整えて乗せ、色や香りを鑑定します。
カップの紅茶は、テイスティングスプーンですくって、「ズーッ」と一気に音を立てながら、空気と一緒に口に含んで、舌の上でころがしながら味わいます。
この方法で、紅茶の味と香りを審査するのですが、紅茶は飲まずに吐き出します。
何百種類もある紅茶の味を、淹れるごとに全て飲むわけにはいかないので、こんな方法でテイスティングをしているんです。

テイスティングを経て出品の決まった紅茶は、オークションにかけられます。
この紅茶オークションは、昔からあった紅茶流通のひとつで、最初はオランダで開かれました。
そして、ロンドンで公開された紅茶オークションが好評となり、世界中の紅茶がオークションに集まるようになりました。
ロンドン、アムステルダム、カルカッタ、コロンボは古くからある伝統的な紅茶オークションで、その後、コーチン・チッタゴン・ナイロビ・ジャカルタなどの地方にも増設されました。

紅茶オークションは、日本の魚市場での競りのように、次から次へと流れるようなスピードで紅茶が競売されていきます。
この時は、紅茶工場(茶園)は取引に関わらず、エージェント(代理店)に一任しています。
なので、紅茶葉を買い付ける時は、スピードとエージェントの腕が重要なんです。

一般的な紅茶メーカーでは、いくつかの紅茶葉をブレンド(配合)して売られることが多いのですが、この紅茶ブレンドの一番の目的は、消費地の水に最も適した配合をして、より良い紅茶を作ることなんです。
例えば、イングランド東部の水は硬水ですが、その他のイギリスの地区は軟水で、同じ紅茶の作り方では、どちらかにしか合いません。なので、それぞれの地区向けの紅茶をブレンドするんです。
また、紅茶は天然の農産物で、同じ茶園でも紅茶の品質はシーズンによって変化するので、品質の安定を図るためにもブレンドは利用されているんです。
品質が変化することで、色んな味わいの紅茶を、シーズンごとに楽しめるのですが、常に同じ味わいの紅茶を提供しなければならない紅茶メーカーでは、ブレンドは欠かせないんですね。

(左)茶園のマネージャーさん (中)ジャンピエールの友達ドミンダさん (右)ジャンピエール

紅茶の葉が出来た後のお話はいかがでしたでしょうか。
今回は、スリランカの紅茶工場でテイスティングをしましたが、現地で飲んだ出来立ての紅茶は新鮮でとてもおいしいものです。紅茶は農産物なんだなとあらためて感じます。
これからも、シーズンごとのおいしい紅茶を求めて旅を続けます!